今回のテーマは子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは…
比較的中高齢の未経産の子で多く見られる疾患です。猫では若齢での発症も多くみられます。
細菌感染による炎症から子宮内に膿が貯留する疾患で、黄体ホルモンが深く関与していることが知られています。外陰部から膿が排膿される開放性子宮蓄膿症と排膿されない閉鎖性子宮蓄膿症に分類され、後者はより症状が重い傾向にあり、卵巣にも異常をきたします。治療が遅れてしまうと、細菌毒の影響でショック症状を起こしたり、膿が溜りすぎると子宮破裂を起こしたりすることがあります。腹膜内に汚染が広がると大変危険な状態になります。最悪の場合には命を落とすこともあります。
症状
食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満
診断
臨床症状や外陰部からの排膿(ない場合もあります)、白血球の増加やエコー検査やレントゲン検査による子宮内の液体貯留が認められた場合に本疾患を強く疑います。
治療
一般的には外科手術による卵巣・子宮摘出が選択されます。繁殖したい場合や高齢で麻酔や手術のリスクが高い場合、内科的治療が選択されますが、外科的処置と比較して再発するリスクは高くなります。
ロールちゃんのケース
元気がなくなり食欲不振もあり、二軒の病院で受診しエコー検査と血液検査も受け、治療してもらっていましたが原因がはっきりせず、一か月以上たっても良くならず、どんどん体調が悪くなってきたので、セカンドオピニオンで来院されました。来られた時は診察室でぐったり伏せていて、体温も平熱の2度以上も下がって冷たくなっており、非常に危険な状態でした。検査の結果、子宮蓄膿症と判断されました。血液検査の結果も非常に悪かったため、ロールちゃんの体調を少しでも回復させる治療を集中して施してからの手術となりました。
危篤状態だったため手術モニター、繊細な麻酔管理等、生命の維持に細心の注意をはらい、手術を終えました。瀕死の状態だったため病状の回復、検査結果の改善は普通の子より時間はかかりましたが、徐々に元気が出てきて退院されました。
メイちゃんのケース
重度の子宮蓄膿症のため、他院で治療をうけていたそうですが、「これ以上の治療は無理です。」と言われ、当院に行くようにと勧められて、受診されました。ひどい貧血を伴う重度の子宮蓄膿症でしたので、内科治療と輸血をおこない、手術しました。ひどく弱っていたので、回復するのに少し時間はかかりましたが、元気になりました。
チップちゃんのケース
チップちゃんは18歳のチワワです。若い時に帝王切開で女の仔を産んでおり、その仔が14歳の時に子宮蓄膿症で、他院で治療を受けていましたが亡くなってしまったそうです。チップちゃんにも同じような症状がみられ不安になり、当院を紹介されて来院されました。各種検査でやはり子宮蓄膿症でした。高齢で、心疾患、貧血があり、リスクはありましたが、「このまま様子見ていてもチップちゃんの子供と同じように死んでしまう。」と手術を希望されました。開腹すると以前の帝王切開のための、ひどい癒着があり手術は大変でしたが、無事に終わりました。数日の入院治療で、血液検査数値も正常になり元気に退院されました。